ほらあなブログ

ちょっと気になることを調べたり考えたりした記録

大陸の東の果ての諸島

大戦の前に大陸の東の果てにある諸島が国家として独立していた頃の話を、歴史の授業で習ったことがあると思う。
その諸島にはJapaneseという民族が長い間居住していたというが、多くの人が知るように、今ではその血を受け継ぐものはほとんど残っていない。
世界経済が落ち着きを取り戻し復興が進む中、国際的世論において極少数民族の権利の尊重や文化の保護を重視する風潮が強まっている。

今朝、ある意見広告を見かけた。配信されたニュースに連動して表示されたものだ。
"I am the Japanese"という主張を手書きメッセージ風にデザインしたグラフィック広告だった。アジア系の女性にしては容姿が非常に整っているモデルが起用されているが、彼女は若くしてJapanese文化振興に精力的に活動している活動家であるという。
手書きメッセージの風の主張の最後は、こう結ばれている。
"I am the Japanese, That's my identity."

Japaneseはかつて独自の言語を有していたそうだが、利用機会の制限に伴う話者の急激な減少により、今では文化振興においてキャンペーン的に使われるに限られている。物理的な書物としてはほぼ残っていないため、インターネット空間上にアーカイブされたわずかなJapanese語を頼りに、文化としての調査分析や保存活動が細々と行われているようだ。

"I am the Japanese"という主張を母語のJapanese語ですら発することができないことを思うと、つくづく極少数民族の立場に置かれることへの恐怖、そして寂しさのようなものを感じる。
"I am the Japanese"というメッセージと共にこちらに向かって笑顔でたたずむ写真の中の彼女は、一体何を思っているのだろう。その思いさえ、彼女とその祖先が使用していた言葉を通して聞くことは叶わないのだ。

少し経って、グラフィック広告として配信されていた例の意見広告の別バージョンと遭遇した。音声メディアの合間に流れたバージョンでは、一瞬だけJapanese語での語りかけが含まれていたという。耳慣れない言語だったので最初は聞き逃してしまったが、広告主のウェブサイトで調べるとその内容が文字起こしの形で掲載されていた。

"Watashi ha Nihonzin. Watashi no Hokori desu. "
なんでも、この部分がJapanese語に該当するらしい。正しい発音なんて全くわからないけれど、そっと声に出してみた。なんだか口の周りの筋肉が柔らかくなって、自然と全身がリラックスしていくような心地を覚えた。