昔は楽しかったことが楽しくなくなったとき
昔は楽しかったことが楽しくなくなったとき、楽しいと感じていた頃の自分にインタビューしに行ってみてはどうだろうか。
昔はあんなに楽しかったのに、なんで今はちっとも楽しいと思えないんだろう。昔趣味だったものが楽しくなくなると、不安になる。なぜ不安になるかというと、自分の連続性が断たれてしまったように感じるからではないだろうか。自分が自分でなくなってしまったかのような恐怖心。特に病気をしたりショックな出来事があったりして精神的に弱っているとき、自分が自分でなくなることへの恐怖は増すように思う。
あんなに好きだった音楽がノイズにしか感じられなくなった。自家用車で移動するさいに音楽を流しても、運転に対する集中力を削ぐばかりだった。
「ねぇ自分ちゃん、あなた高校生の頃アジカンにハマってずいぶんアルバム聴いてたよね。どういうところがそんなによかったわけ?」
「歌詞が深いと思った」
「深いってどんなふうに」
「意味がぱっと見わからなくて、こういうことかな、それともああいうことかなって色々考えられる感じ」
「今は歌詞の意味がわかるの?」
「……わかんない。また聴いてみる」
久しぶりに聴いたわりに歌詞がずいぶん聴き取れた。思い返せば、歌詞カードを見ながら繰り返し聴いて口ずさんでいたものだ。カラオケで歌いたくて聴き込んでいた頃があった。
歌詞が聴き取れても意味がわからない。なんとなくわかるが、人に説明できるかと言われるとうーんと唸ってしまうあの感じ。わからないことにふわふわと身を委ねていることが楽しかった頃があったのだろう。わかんないけどなんかいいんだよねっていうのが自認できていた頃があった。
ああ、きっと「わかんないけどなんかいいんだよねセンサー」が鈍ってきてるんだ。楽しいとか好きとか趣味とかって、わかんないけどなんかいいんだよねって感覚が支えていたんだ。
昔は楽しかったことがことが楽しくなくなったとき、楽しいと感じていた頃の自分の感性を思い出して観察してみる。そうすると、違う次元でまた楽しむことができるかもしれない。