ほらあなブログ

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お弁当やさんの『ちひろさん』漫画感想と現代フェミニズム社会に思うこと

Amazonのプライムリーディングで『ちひろさん』の1巻を読みました。感想を書きます。

 

漫画『ちひろさん』を読んだ感想

ちひろさんは30代の女性です。風変わりで堂々としています。そして周りの人たちのことをよく見ている。でも、自分が周りからどう思われてもあまり深追いせず気にしません。ひょうひょうと生きているようにみえますが、経験に基づいた深い思考が土台にあるのが伝わってきます。

 

 

ちひろさん』についての感想と現代社会に思うことを重ねて

この漫画を簡単に説明すると、「元風俗嬢がお弁当やさんの看板娘になってみた」ストーリーです。2020年からのパンデミックに陥った世の中で、女性や非正規で雇われている人たちの貧困問題がクローズアップされるようになりました。さらにフェミニズムの声が大きくなったタイミングも重なり、性産業に従事する女性の権利問題が問われています。

そういう過熱したSNS議論やネットニュースに溺れてしまうと、フィクションの作品を手放しで味わうことがなかなか難しくなります。

奥付にある発行年を見ると数年前に発行された単行本だとわかるので、この数年で私の感性はずいぶん凝り固まってしまったのだなあと感じます。創作を創作として純粋に楽しめなくなってしまった。

 

アンダーグラウンド世界を描写した漫画に闇金ウシジマくんがありますが、それを読んだあとの感情とまた違ったタイプの感情がわいています。比較対象にするには問いのたて方が間違っているのかもしれません。

 

ちひろさん』の1巻の中に、あなたの中の違和感をひとつづつ紐解いてみて残ったものが答えだよみたいなシーンがありました。それに倣って私の違和感を分解してみることにします。

 

違和感はこうです。元風俗嬢の経歴をオープンして地域から受け入れられるありえなさに入り込めない。『ちひろさん』の舞台であるのこのこ弁当があるのは地方都市の商店街っぽいなと感じました。人情が残っている気配があります。登場人物に、性格に多少難ありなおばちゃんが出てきます。このおばちゃんも別の面から見ればすごく美味しい漬物を作れる長所があったりして、マイナス面だけでなくトータルで見て周囲から受け入れられています。そういうところに人情味があると感じました。

そんな地域性だから、ちひろさんが元風俗嬢であることを大っぴらにしても受け入れられているのか?少し違うような気もします。

ちひろさんの人間性がもたらす結果なのか?こちらの方がしっくりきます。それがたまたま地域性とマッチして安心安全なフィクションの世界が構築されているのかなと思います。

あとがきに、ちひろさんはあなたの身近などこかにいるかもしれませんみたいなメッセージがありました。確かにいるかもしれないし、いたらおもしろい、話してみたいと思います。ただ、ちひろさんがちひろさんとして成立する地域が身近などこかにありそうかなと思うと、なさそうだなとたちまち怖くなります。

世界は私が思うほど怖くはなく、生きてる限りやってみればなんとかなるものなのかもしれません。きっと世の中をそういう視点で捉えられれば、この漫画の世界観に没入して楽しめるのかなと思います。楽しいというのはなにもワハハと笑える楽しさだけではなく、しんみりとセリフの意味をあれこれ考えるみたいな、味わったり解釈したりする楽しさも含みます。

 

フィクションをフィクションとして楽しめる世の中は幸せなんだなと改めて思います。私は自爆して勝手に息苦しくなりつつあります。多様性だとか人権だとかいう言葉に安易に惑わされずに、「世の中はこうあるべき」という思想で凝り固まってしまわないように何とか生きていきたいです。小説とか漫画とか、創作の力を借りれば何とかなるかなと淡い期待を抱いています。

 

 

 

作品情報

タイトル 

ちひろさん』

 

作者

安田弘之

 

以下はKindle版のリンクです。全部で9巻です。

ちひろさん 1 (A.L.C. DX)

ちひろさん 1 (A.L.C. DX)