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ギョウジャニンニクを食べるタイミングに全力で狙いを定めていたあの幸福な日々

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ギョウジャニンニクという食べるタイミングを誤ってはならない山菜

ギョウジャニンニクという山菜をご存じだろうか。ギョウジャニンニクは、食べるタイミングを誤るとひどいことになる山菜として有名だ。そのため、知人から譲り受けたり山から採ってきたりした後でも油断できない。春になりギョウジャニンニクの季節がめぐり。「ヤッター」とばかりにむやみに刻んで醤油漬けにしてその晩にすぐさま食してはならない。冒頭で述べた通り、食べるタイミングには細心の注意を払う必要がある。

 

近年ではギョウジャニンニクを食べるタイミングに関する教育機会が減少傾向に

5月の爽やかな朝。出社したOLのお嬢さんが「おはようございます!」とにこやかに挨拶をする。図らずも昨晩ギョウジャニンニクをお楽しみしましたということを不本意ながら周囲に振りまいてしまう。おいおい誰か教えてやらなかったのか……という春の風物詩がインターネット上でも囁かれるようになり、ギョウジャニンニクを食べるタイミングの危険性は周知が進んでいる。それまでというもの、ギョウジャニンニクを食べた翌日には人と会うことを控えるべしという教訓は、先祖代々それぞれのイエで脈々と語りつがれてきた。近年核家族化が進んだことにより、ギョウジャニンニクを食べるタイミングについて家庭内で深く教わる機会は減少している。その結果、春の不幸な事故はどうしても一定数発生してしまうようだ。核家族化や少子高齢化は解決が難しい問題だが、ギョウジャニンニクを食べるタイミングの危険性についてインターネット等を通じて普及していくことはひとりひとりの心がけ次第で即座に取り組むことができる。季節性の問題であるため、コツコツと地道に啓蒙活動を継続していくのが効果的であろう。

 

ギョウジャニンニクを食べるタイミングを誤るとどうなるか

ギョウジャニンニクは食べるタイミングが肝心だ。万が一ギョウジャニンニクを食べるタイミングを誤ってしまった場合、人は一体どうなってしまうのだろうか。ここではAさんのケースを紹介する。

Aさんのケース

Aさんは5月の大型連休最終日に、山へ山菜採りにいった知人からおすそ分けとしてギョウジャニンニクを譲り受ける。新鮮で香りがよいうちにたっぷりと刻み、餃子のあんに加えて夕食の献立とした。あまりのおいしさにギョウジャニンニク入りの餃子をパクパクと次から次へと食す。就寝前にしっかりと歯磨きをし入眠。

翌朝爽やかな気分で目覚めたAさんは、連休明けで若干気乗りしないところもあったが、元気に仕事に出かける。連休明けということも影響していたのか、妙に周囲の態度がよそよそしいように感じる。Aさんは気にしないように努めたが、同僚の一人が神妙な面持ちで何か言いたげにしている様子を放ってはおけなかった。

そこでAさんは同僚に「どうしましたか?」と尋ねたところ、「あなた……昨日食べたでしょう……あれを……食べてしまったのね……」との返答を得る。Aさんは言葉を濁す同僚に対し不思議に思ったが思い当たる節があったので会話を続けた。「はい!昨日は晩ごはんに餃子を食べました!」同僚は探るようにAさんに尋ねた。「もしかして……その餃子に……アレを入れなかった?」「はい!おすそ分けでもらったギョウジャニ「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

おわかりいただけただろうか。わからなかったよという方も想像してみてほしい。ギョウジャニンニクという山菜は、玉ねぎやにんにくといった香味野菜をはるかに凌ぐレベルで口臭や体臭を生じさせる。恐ろしいことに、食べた本人は臭気に気付くことが難しい。よって「な~んだ、気を付けろ気を付けろってよく言うわりに全然たいしたことないジャン☆」などと油断をしているとギョウジャニンニクの洗礼を受ける羽目になる。

他人に迷惑をかけるかかけないかだとか、口臭や体臭をマナーとしてどこまで個人個人が配慮するべきかだとかいう観点についてこの記事で論じたい訳ではない。「こんなはずじゃなかったのに……」と後悔する人もいればしない人もいるだろう。ただ、世の中には前提として知識があれば避けられる危機もあるのだということを伝えたかった。ギョウジャニンニクの威力は強大だが、敵を知っていれば対策を立てられる。そう、食べるタイミングを調整することで思う存分その味覚を堪能することができる。

 

ギョウジャニンニクを食べるタイミングを見定める機会を失ったディストピア

人類はギョウジャニンニクを食べる最適なタイミングを見計らうことを通して発展してきた。「ここだッ!」というタイミングを見定めてギョウジャニンニクを食べ、その残香が周囲に悟られない水準になれば何食わぬ顔で人と会うというサイクルを繰り返してきた。「え?今シーズンに入ってからギョウジャニンニクを食べたかって?どんなもんですかねえ……そろそろだとは思いますがねえ……」人がギョウジャニンニクを食べたと周囲に発覚することを避ける理由の一つとして、ギョウジャニンニクの入手経路を秘密にしておきたいからという隠された心理が挙げられる(諸説あります)。山菜スポットというのは口伝えでまことしやかに伝承される面があり、どこでいつ採ったかというのは大っぴらにすることが避けられてきた。それが乱獲を防ぐ役割を果たしてきたと同時に、希少価値を高め格別の旨みをもたらしてきた。ギョウジャニンニクと人が共存し、人と人が共存してきた。

ところが、2020年にCOVID-19が蔓延してからというもの状況は一変した。ギョウジャニンニクを食べるタイミングに全神経を注いだ春は2019年が最後だったのだ。人々は社会的距離(ソーシャルディスタンス)などと称し互いに離れて過ごすようになった。さらにマスクで口元を覆うようになったことも追い打ちをかけていた。試しにギョウジャニンニクを食べた翌日に人前に出ても、「あーんた昨日食べたンでしょッ!」などとツッコミを入れる人もお節介を焼いてくれる人も皆無であった。思う存分にギョウジャニンニクを食べられる時代が到来したと人々が喜んだのもつかの間だった。バレるかバレないかこっそり食べるという攻防戦に挑む必要が無くなり、やがて人々はギョウジャニンニクを察知する能力を失った。

人がギョウジャニンニクを採らなくなって数十年経ち、世界はギョウジャニンニクに覆いつくされていた。

 

 

 

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